CWC Annex2 Schedule1の改訂内容について

 はい。plaxma_yです。
CWC(化学兵器禁止条約) 附属書 スケジュール1の改訂がCSP24において2019年11月27日に採択されました。
その具体的な内容が2019年12月23日に発表され、2020年1月7日にOPCW SciTechのアカウントがその件についてpdfへのリンク付きでツイートしました。以下内容を追います。

 採択から180日後の2020年6月7日までに4つのシナリオに分かれて(といってもほぼすべての国が批准、署名しています)履行されるようですが、ここでは手続き上のあれこれはすっ飛ばして11ページ以降の具体的な化合物の話のみをします。
 1番から12番までの化学剤、前駆体についての変更はありませんが化学剤の項に13番から16番が追加されました。順に見ていきます。

(13)  P-alkyl(H or ≤C10, incl. cycloalkyl) N-(1-(dialkyl(≤C10, incl. cycloalkyl)amino))alkylidene(H or ≤C10, incl. cycloalkyl) phosphonamidic fluorides
and corresponding alkylated or protonated salts
 13~15番はいわゆるNovichokですね。アミン部分がLewis塩基なので塩を含むことが明記されています。



 A-230に似ているので比較しました。全部デシル…でかくない?

(14)  O-alkyl (H or ≤C10, incl. cycloalkyl) N-(1-(dialkyl(≤C10, incl. cycloalkyl)amino))alkylidene(H or ≤C10, incl. cycloalkyl)phosphoramidofluoridates
and corresponding alkylated or protonated salts
 画像で文書中に挙げられた3つの例を描きました。



 ホスホ「ル」アミドフルオリデートなのでエステルになっていると考えています。
(ちょっとよくわかっていません。すみません)

(15)  Methyl-(bis(diethylamino)methylene)phosphonamidofluoridate
CAS RN:2387496-14-0

















 15番は名指しなので該当する化合物は一つです。(追記:リン原子がキラル中心なので厳密には二つです。)
ホスホ「ン」アミドフルオリデートなのでアルキル基がリンに直接結合していると考えています。

(16)  Carbamates (quaternaries and bisquaternaries of dimethylcarbamoyloxypyridines)
Quaternaries of dimethylcarbamoyloxypyridines:
カルバメート剤:ジメチルカルバモイルオキシピリジン4級塩
これは既に「みりけむ!」でも取り上げた化合物です。

1-[N,N-dialkyl(≤C10)-N-(n-(hydroxyl, cyano, acetoxy)alkyl(≤C10)) ammonio]-n-[N-(3-dimethylcarbamoxy-α-picolinyl)-N,N-dialkyl(≤C10) ammonio]decane dibromide (n=1-8)

 これはちょっと範囲が広いですが、例として挙げられている化合物とそれを範囲とする特許を画像にして説明します。


これらの追記された化合物が本当に全て廃棄処理されるのでしょうか。はっきり言ってわかりません。
 カルバメート剤については「みりけむ!神経剤の化学 改訂第2版」で詳しく扱っています。
通販のみですがこちらからどうぞ。

 



















 構造が間違っていた場合は教えていただけると幸いです。
 最近なんだか化学兵器ウォッチャーになっているplaxma_yでした。

参考文献:Ellison, D.H. "Handbook of Chemical and Biological Warfare Agents" 2nd edition  CRC PRESS 2008

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