OPCWの文書EC-96/DG.7について

  ご無沙汰しております。plaxma_yです。

すこし前の話になってしまいますが、2021年1月28日にOPCWから文書EC-96/DG.7が公開され、同3月9-12日に議題として取り上げられました。内容としてはOPCW内の中央分析データベース、OCAD(OPCW Central Analytical Database)の更新です。文書のメインである「OCADに含まれることが提案された分析データ候補のリスト」が直感的にわかりにくいのと興味深い化合物が複数見受けられるため、構造式を書き起こしてわかる範囲で解説したいと思います。

 まずTABLE1はIR(赤外分光)のデータです。具体的な生データに関しては加盟国の当該機関によってのみ共有されるものであり、部外者の我々は基本的に閲覧することはできません。





 左のコードは元のpdfにあるようにOPCWが管理用につけた遠し番号です。シアノ基が付いているので全てタブンの誘導体と言ってよいと思います。似た化合物としてEA1245が挙げられるので参考に載せました。

 TABLE2はMS(質量分析)のデータです。省略部分はTABLE1と重複する化合物です。注目点はそれ以降のノヴィチョク類と中でもセレノ体が存在することです。神経剤のチオノ体はシトクロムP450を介してオキソ体になり効果を発揮するプロドラッグですが、セレンで置換したセレノ体は当文書で初めて見ました。チオノ体よりもさらに効果が遅れて現れることを狙った化合物だと思われますが、詳細は全く不明です。



















 TABLE3はGC(RI)のデータです。RIは保持指標という意味らしいです。一部V剤やその前駆体があります。ヒ酸エステル、亜ヒ酸エステル、次亜ヒ酸エステルに関してはシス-トランスの記載がなかったため安定であろうトランス体で構造式を書きました。また、TABLE2同様1種類ですがノヴィチョクのセレノ体があります。






















 TABLE4はMS/MSのデータですがG剤の前駆体が中心で特に目新しい化合物はないので割愛します。

 今後も何かあったときに(ない方がよいのですが)ブログでお知らせできればいいなと考えております。新刊出したいですね…。


 2021/04/06追記:大事なことを書き忘れていましたが、EC-96/DG.7のリストに懸念を表明する加盟国がなかったことから2021年3月9日に文書EC-96/DEC.1が出されOCADの更新は承認されました。



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